電車に乗っていると、ふと目にする「墓地販売中 1区画〇〇円」などの文字。
お墓を買うってどういうことでしょう。家やマンションを買うのと違うのか。簡単にまとめてみました。
お墓の種類
住まいに、戸建て・アパート・マンション・シェアハウスといった様々な住まい方があるように、故人の住まいであるお墓にも様々な種類があります。
- 家墓(~家之墓、といった形式で先祖代々引き継がれているお墓)
- 個人墓(お1人だけを埋葬し、いずれ合祀になる可能性が高いお墓)
- 夫婦墓(夫婦だけが入り、いずれ合祀になる想定のお墓)
- 共同墓(信徒や友人同士などが一緒に入るお墓)
- 合祀墓(様々な人達が一緒に入るお墓。基本的に遺骨も一緒になります。)
- 納骨堂(故人の遺骨を「埋蔵」せずに「収蔵」する施設)
墓地の所有者
上記のようなお墓が設置されている「墓地」は誰が所有しているのでしょうか。
- 地方公共団体
- 個人(現在では原則として新設することはできない所有形態)
- 寺などの宗教法人
- 公益財団法人や公益社団法人
- 集落(江戸時代の村を単位としている場合が多いようです)
あれ?家やマンションならば、買った人達が所有しているのに、どうして「墓地」は違うのでしょうか。
お墓を買うとは
「お墓を買う」ということは、一般的には、①当該墳墓の敷地である墓地を使用することができるという「墓地の使用権」を取得すること、又は、それに加えて、②「墓石の所有権」を購入することを意味します。(NPO法人遺言・相続リーガルネットワーク編著『お墓にまつわる法律実務』日本加除出版株式会社2016年10月)
従って、石材店から購入した墓石(これは、自分のもの)を墓地の特定区画に設置し、遺骨等を埋蔵する権利(墓地の使用権)を得ることが、お墓を買うということになります。
これが合祀墓であれば、墓石を購入し設置することなく、合祀墓に遺骨等を埋蔵する権利のみを得ること、となります。更に、納骨堂であれば、遺骨等を収蔵(埋めるのではなく、収納する)するロッカーや棚、仏壇形式や墓石形式のスペースを使用する権利を得ること、となります。
整理すると、お墓は土地(特定区画)を購入して、自分の土地にするのではなく、その土地を使用する権利を購入するんです。
※墓石は自分のものです。
※個人や集落が所有している墓地の場合は事情が異なります。
墓地使用権はいつまで?
では、購入した「墓地の使用権」はいつまで有効なのでしょうか。購入した方一代限りでしょうか。
民法第897条1項にいう「墳墓の所有権」には、「墓地使用権」も含まれます。
民法第897条
1項 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を承継すべき者があるときは、その者が承継する。
2項 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
従って、基本的には祭祀承継者がいる限り、半永久的に墓地を使用することができます。
祭祀承継の決め方(①→②→③の順番で承継者が決められます。①がいなければ②、②がいなければ③)
① 被相続人が指定する者
② 慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者
③ 家庭裁判所が定める者
※祭祀承継とは、相続財産とは異なるものです。仮に相続人が相続放棄をしても、祭祀財産を放棄したことにはなりません。また、1人が承継するもので共有になることは原則ありません。更に、ここでいう慣習とは、従前の家督相続の慣習とも異なることを意味しており、当然に長男が承継することを意味していません。
祭祀承継者がいなくなり、お墓の管理料の支払いが滞ると、墓地の規約等にもよりますが、墓地使用権が消滅し、墓石等撤去のうえ、遺骨が合祀されてしまう可能性があります。
ただし、もたらす結果の重大性から、すぐには撤去されるわけではありませんので、昨今では、いわゆる「無縁墓」(承継・管理がされていないお墓)が増える事態となっています。
また、死生観の変化などから、承継を前提とした「家墓」以外の、そもそも承継を前提としないお墓(永代供養墓ともいう)が増えてきています。
これらの墓は、最初から合祀又は一定期間後に合祀されることが決められたものとなり、祭祀承継されることを想定していません。※お墓の管理料は必要になる場合があります。
まとめ
「お墓を買う」とはどういうことか。簡単にまとめてみましたが、昨今のお墓は「家」の墓から「個」の墓へと変化してきています。
家族による先祖代々への慰霊が永続する仕組みの維持が難しくなっていることは、墓地の永続性にも関わり、墓地の所有者の経営の安定性をどのように確保するかが現実的な問題となっています。
「お墓を買う」ことを希望されている方々は、ご自身の「死後の尊厳」がどうあるべきかをじっくりと考え、ご家族としっかりご相談のうえ、様々なご懸念にしっかりお応えされる信頼できる業者様を見つけることをお勧めいたします。
行政書士しげなが事務所では、あなたの「思いを伝える架け橋」になり、時代や状況にあった最適なご供養の心の表し方を実現するためのお手伝いをいたします。
コメント